気がつくとあの日と同じようにあたしはひとりで公園のベンチの前に突っ立っていた。


ゴスロリちゃんの迫力に緊張したせいか、ひとりになって何だか力が抜けた。


目の前のベンチに座ると深いため息が出た。



「結局……元通りにはなんねーのかよ……」



ゴスロリちゃんは返すと言っていたが、ひなたがあたしの近くにいることで『返してくれたこと』になるのかは微妙だ。

それでもひなたに会えずにいるよりかはずっといい。


「一から始めるって決めたしな……ひなたがあたしを覚えてなくても全然平気だ」



あたしは平気……。


強がりを言うことで自分をごまかさないと辛い。

記憶がないひなたはどんな気持ちでいるんだろう。


きっと平気じゃない。


あたしよりも辛い。



ひなたを思うと鼻の奥がツンとして視界が揺らいだ。



「あたしは平気……全然平気だ……」




そうやってしばらく上を向いたまま、あたしはベンチから動けなかった。