ゴスロリちゃんは扇子をパタンと閉じると着物の懐にスッと仕舞った。

あたしはその綺麗な所作に思わず見とれてハッとした。


「ひなたを返すって……返してくれるの?」


「アレはもう使い用がない。人の姿でお前の近くに置いて生かしてやる」


「……ひなたの記憶はどうしたの……」


「狛犬にするつもりで記憶を消したのだが魂が器に定着しなかった。諦めの悪い奴だ。記憶がなくとも感覚で拒絶する……。お前に対する未練がまだ残っているからだろう」


「やっぱりあんたがひなたの記憶を消したの!?」


「バラバラだったアレを継ぎ合わせて作り直したのは儂だ。記憶を消すのは造作ない」

「戻して!!元のひなたに戻してよ!?」


「たやすいが儂はあのツギハギの恋を見届けてみたい」



風がザワザワと公園の木を揺らした。

ゴスロリちゃんの目があたしを捕えるとあたしは金縛りみたいに動けなくなった。

ゴスロリちゃんがあたしに近寄る。



「綿の詰まった布切れが人を思い心を持った」


ああ……

悔しい。


「思い人からバラバラに身を引き裂かれても布切れの思いは揺らぐことはなかった」


無力な自分が悔しい。



「その思いが記憶を無くしても再生されるのか……」


こんなあたしでも

あたしがひなたの為に出来ること……。



「儂は見届けたいのだ」




あたしはひなたの記憶を取り戻してひなたの思いに答えてあげたい。