あの日あたしは残酷な仕打ちをした。

だってプーはただの縫いぐるみ……。

感情なんてあるわけない。


プーをパパから貰った当時、あたしは9歳。

ギスギスした家の中に居場所なんてなくて、プーは親に甘えることのできないあたしの安定剤になった。




月日が流れていくうちに両親の仲は悪化。

次第にあたしの心も麻痺して泣くことはなくなった。

中学に上がるとプーを抱いて寝ることもなくなり、そのうちプーの存在も忘れた。


そして両親の離婚が決まった翌日。

あたしはふと、プーを思い出して手に取ったカッターでプーをズタズタに切り裂いた。


心なんて有るはずない。


だってプーはただの犬の縫いぐるみ。



縫いぐるみが心を持つなんてありえない……。