あまりのショックに言葉が出なかった。


人間に変身する犬の一族ってのは嘘で、ゴスロリちゃんが犬のひなたを人間の姿にした。

そもそもひなたは犬ですらなかった。


じゃあ、ひなたは何?

ゴスロリちゃんは?


何が起きてるのか理解できない。






「最後にもう一度問う。お前、本当にこれを思い出さないかい?」


呆然としたままのあたしにゴスロリちゃんは顔色変えず平然と尋ねた。


思い出さないか?

最後って?

あたしにはさっぱりわからない。

ゴスロリちゃんの得体の知れない怖さに体か強張る。



「最後って何……返して。ひなた返して……」


やっと出た言葉は声が震えていた。



「思い出さんか……。残念だがこれはお前にはやれん。これは狛犬にする約束だ」

「ひなた返して!お願い返して!!」


ひなたを抱えて立ち上がったゴスロリちゃんの肩を思わず掴んだ。


「返して……お願いします!!」



しがみつくようにしてあたしはゴスロリちゃんに懇願した。

対照的にゴスロリちゃんは涼しい顔で払いのけると手をスッとあたしの頭の前に差し出した。




「お前はこれの体をバラバラに切り裂いて捨てたではないか」


「え……」


その直後、目も開けられない突風が吹く。



「ひなたっ…!!」


目を開けられないまま手を伸ばしてあたしは必死にひなたを掴もうとした。

柔らかな毛並みに触れた瞬間、あたしの頭の中にひなたの声が流れた。