□■□■ 「なぁ、この本どこに直せばえぇの?」 高梨は俺の方を見ながらそう尋ねてきた。 「そこ」 あえて小説から視線を外さずに、雑に答える。 「そこって、どこよ?」 指差して教えてあげたいけど、俺は絶対教えない。 「……」 答えてやりたいけど、俺は絶対答えない。 「なぁ、聞いてんの?」 「あぁ」 いつも放課後はこんな感じで、高梨はかなり悪戦苦闘しているだろう。 わかってはいるけど、俺は絶対手伝わない。