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「冬の星空は、一年の中で一番綺麗なんやで」


「……そう」


私は柴山こと、シバに連れられ、この山奥までやって来た。


夜の山は真っ暗で不気味だ。


風が吹くたび、ぞっとする。


「ほら見ろや。あれがオリオン座」


シバが小さな岩の上に座ったので、私もその隣に腰掛けた。


シバは夏の日焼けが戻っていない黒い人差し指を夜空に向け、


リボンのようなオリオン座を指差した。


「……オリオン座くらいわかるよ」


「ほんなら、冬の大三角はわかるんか?」


「興味無い、星なんて……」


冷たくなった手を無意識に擦り合わせながら、シバの方に顔を向けた。


「夏の大三角は知っとるやろ?ベガ、デネブ、アルタイル。

冬の大三角は、シリウス、プロキオン、べテルギウスや。

あれと。

あれと。

あれ」


一つ一つ指差しながら、シバは私に説明してくれる。


星なんて、どうでもいいのに。


シバは何がしたいんだろう?


「そんで、そのシリウスとプロキオンと、ポルックス、カペラ、アルデバラン、それとオリオン座で一番明るいリゲルをつないだら、冬の大六角形になるわけや。

冬のダイヤモンドとも言うんやで」


「……それが何?」


シバが指差す先には広大な星空が広がっていて、


私が理解できたのはリゲルとべテルギウスだけ。


「冬の星空は明るい星が多いやろ?1等星以上の星が7つもあるんや」


「……そう」


1等星なんて言われても、天文学は興味が無いからわからない。


「で?……私をここまで連れてきたのはどうして?」