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「小梅〜。多分、千冬来るから仲良うするんやで」


「……にゃ」


嫌。


誰が仲良くなんてするもんか。


寒い季節になると、千冬がやって来る。


そして、私の杏ちゃんを横取りするのだ。


だから引っ掻いたり、パンチしたり、頑張って千冬を追い返そうとする。


でもそうする度に、杏ちゃんは千冬を守るのだ。


「にゃーにゃー」


杏ちゃんは小梅よりも千冬の方が好きなの?


「ん?なんや?小梅」


私が擦り寄ると、杏ちゃんは大きな手で私を優しく撫でてくれる。


「にゃーにゃー」


「小梅は可愛いなぁ」


「にゃーにゃー」


好きって伝えたいのに、私の口からはにゃーという音しか出てこない。


小梅だって、できることなら人間に生まれたかった。


「杏兄ー」


ガチャリと玄関の開く音がして、千冬の声が聞こえる。


「おぉ、千冬」


杏ちゃんは私の元を離れ、千冬のところへと行ってしまった。