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冬生まれだからとか、


名前が千冬だからとか、


そんなの関係無い。


私だって冬は寒いのだ。


「千冬の部屋にもこたつ欲しいー」


私の部屋にはこたつが無い。


座敷にあるこたつは祖父母が占領しているし、


ストーブは臭いから嫌だ。


「てか、杏兄(きょうにい)離れてよ!」


だから私は冬になると、


幼なじみで5つ年上の杏兄の部屋のこたつにお邪魔しにくる。


「嫌じゃ。千冬温かいもん」


杏兄は寝転んでいる私の背中に、ピタリとくっついて離れない。


「ぶにゃー!」


「……痛っ!」


そして、この光景を見て嫉妬するのが1人。


いや、一匹。


「小梅、痛いやんか!」


杏兄のペットの日本猫、小梅が私の頭を引っ掻いてくるのだ。


「ぶにゃー!」


「痛いー」


しばらく小梅の攻撃に耐えていると、


頭に杏兄のあごが乗ってきた。


そのまま私は、杏兄にすっぽりと包まれる。


「にゃ、……にゃー」


小梅は諦めたのか、私を包んでいる杏兄の腕の中に入ってきた。