十分優しくないから!! …なんて思ったり。 でもそれが言葉として出ることはなかった。 直の瞳があまりにも真剣だったから。 にこり、とも。 にやり、とも。 何一つ笑う素振りさえ見せなかった。 「最初は良かった、 別に好きになってもらわなくても。」 形の整った綺麗な唇が動くと同時に 低い声が空に響いた。 「でも、それだけじゃダメになって。」 きつく、壁についた手を握りしめて。 「俺を見てほしい、って思った。」 喉の奥から出てくるような、そんな。 「直…?」