帰り道。
先輩は忘れ物をしたらしく、
『先に行ってて』
と2人に言って戻った。
前からサッカーにハマっていた直はボールを蹴りながら真優さんと歩いていった。
そのボールは亡くなった祖父からもらった大切なボールだった。
出来るようになったリフティングを得意気に見せる。
それを笑いながら真優さんは見ていた。
このときはもう『友達』として。
それから“何か”が起こった。
走り戻ってきた先輩は、声を失った。
まるで潰れた果実のように変色した手足。
後頭部から止めどなく流れる赤い液体。
『……真、優…?』
冷たくなった真優さんはサッカーボールを、守るかのように抱いていた。
大きなトラックから出てきた運転手が青い顔をして。
直はその場に力なく座り込み、まるで抜け殻のように光を失っていた。
涙だけがその真相を明らかにしていた。
『なんだよ…これ…』
悲劇の終焉。
あまりにも残酷な事実を残したまま幕を閉じた。


