「俺と直が前から知り合いやったちゅうことは分かっとるんやな?」
小さく頷いた。
先輩の隣に足を屈めて座り、優しいその声に耳を傾けた。
「ただの知り合いじゃなくて、かなり深い仲で…。
初めて会ったんは入学式。
いっこ上の俺が学校案内とかやってて。
その新入生の中にめっちゃくちゃ生意気な奴がおってな?…」
「あ!…それって、直?」
少し楽しそうに、懐かしそうに話す姿に思わず言葉が出てきた。
そうだというかのように先輩は笑ってみせた。
「生意気でムカつく!て思ってたんやけど、
なかなかオモロイ奴で…すぐに仲良うなった。」
「あー…そんな感じする」
「ほら、人ってドロドロしとるやろ?
表向きにお世辞言うて笑ったり、妬んだり。
俺の周りにもそうゆうんが数え切れんほどおって…。
せやけど直は違った。
思ったことそのまんま口にして、上とか下とか何も関係ないような感じやった。
まぁ…それでぶつかって喧嘩ばっかやったけどな?」
今と…おんなじだ。
ふと、そんなことを思った。


