静かに屋上のドアを開く。 キィと錆びたドアノブが擦れた。 「早いな」 先輩は音楽を聴いていた。 イヤホンを外しながらあたしを見る。 「…泣いたんか」 短い言葉で、あたしの見られたくないところをすぐに言い当てる。 何だか全て見透かされている気がして。 そんな先輩が嫌いだった。 それでも。 誰かに気付いてほしいと願う自分もどこかにいて。 そんな先輩が好きだった。 だけど。 今まで恋愛対象にはならなかった。 きっと、これからもそれは変わらない。 変わることはないと思う。