抱きしめていた手を離そうとしたけど、先輩があたしの体を引き寄せる。
「……っ」
「…俺やっぱダメや。諦められへん。」
強い、声だった。
だからあたしは何も言わなかった。
言えなかった。
「ずっと…ずっと諦めようって頑張っとった。でも…」
あたしは何て言えばいい?
この腕を振り払って直が好きって言えばいい?
こんなにも優しい人をまた傷つけられる?
わかんないよ…
「わかってる。頭ではわかってるつもり…やったけど…やっぱ、奈緒が好き。好きなんや。」
わからなかった。
…上手く理解できていなかった。
この唇の熱に―…


