「ほんじゃ俺は行くかな」 ドアの方へ歩いていく会長の背中。 何よりも優しい背中だった。 「あのッ!!」 「…ん?」 呼び止める声に反応してゆっくりと振り向いた。 「ありがとう、ございましたっ…かいちょ…」 言いかけてやめた。 首を軽く振ってから言いかけた名前を呼んだ。 「…慧、先輩」 なんか悔しい感じもするけど… 来てくれてすごく安心した。 「おおきに、奈緒。」 「…っ」 その笑顔があんまりにも優しくて、思わず声を失った。 歩いていく背中をあたしはぼんやりと見つめていた。