『傑作だったよ』

休み時間になって美加が話しかけて来た。
美加はあたしの唯一の親友。昨日もこの子に誘われたんだっけ。

『よりによってあそこで『クレイジー』っていうかね。』

美加の明るい声に、あたしはつれなく答える。

『仕方ないでしょ。全然聞いてなかったんだから。』

『あんたには絶対笑いの神がついてるんだって!』

にやにやした美加の言葉をあたしはすぐ遮った。

『笑いの神』なんかに憑かれたらたまったもんじゃない。
誰が言い出したのか知らないが、テレビ番組で狙ってはおこせないような笑いが起きたときに言われるこのフレーズは、
すっかりあたしたちの日常生活にまで溶け込んでいる。

あたしはクラスの空気でいたいのだ。
目立つこともせず、かといっていじめられることもなく、
卒業したあとクラスのアルバムを開いてやっと思い出されるような存在。

そんな存在でいいの。