【件名:ゴール裏にいます】

スタンドマンの彼に石本酒蔵の場所を教えて貰いお礼を言った。

「お土産の勝ち点は勘弁ですよ」

そうだ、ここはもうアウェーの街だった。



彼に聞いた通りの場所に石本酒蔵はあった。
思っていたよりもこじんまりとした古い酒倉だ。


僕は石本酒蔵の事務所を訪ね、権田先輩と同じ歳位の人を探してみた。

「ああ、そりゃ多分専務の事だな。専務いたかな?」

最初に声を掛けた年配の男性が事務所の奥の方に入ってゆき、専務と呼ばれる男性を呼んで来てくれた。



「権田なら友人ですよ。最近こっちに戻って来たみたいですね」

「え!連絡があったんですか?権田さんから」

「おとといだったかなぁ・・突然連絡して来て特醸酒を一本分けてくれって。何かのお祝いだとか何とか・・」

「お祝いって言ったんですか?権田先輩」

「ああ・・言っていたねぇ」

(何かニュアンスが変わってないか?切羽詰まった状況ではないのか?)

「それで、その特醸酒はもう取りに見えたんですか?」

「それならこの先の直営店に取りに行くように言ったけど」

「いつですか?」

「今日の昼って言ってたなぁ・・」

(ビ、ビンゴ!こんなに早く見つかるなんて、奇跡だ!)



今の時刻は午前11時。

僕らは教えて貰った直営店に先回りする事にした。





新潟駅前を北に向かい、信濃川に架かった柳都大橋を渡ってしばらく進むと、石本酒蔵の直営店はあった。

『日本酒 越乃寒梅 きた山』

営業時間は午後5時半からとなっていたが、人のいる気配に、僕は入口をノックしてみた。

中から品の良い和服を着た婦人が現れた。

「すいません。今日のお昼に特醸酒を取りに伺う予定の人はまだ来てませんよね?」

「あらー?たった今見えた所ですよ。ほんのたった今」

「えー!そ、それでその人はどっちに向かったか分かりますか?」

「あらぁ、私は店の中にいたもんですから・・」

「ど、どんな格好してました?お一人でした?」

「あのほらサッカーのオレンジ色のシャツ。一緒に若い女性もいたかしら。凄く胸の大きな方だったわ」



僕はご婦人にお礼を言い、店の表へ飛び出して行った。