「『だから夢は諦めちゃいけないよ。短大辞めるなんて許さない』って言われた。そう言われて短大を辞める事はしなかったんだけど、やっぱりお金の事で迷惑掛けちゃって、あたしはアルバイトを始めた」
(ん?これは聞いてないな)
「アルバイトは風俗だったの・・」
「沙希ちゃん!もう良いですよ!聞きたくはありませんから!」
「ううん。ちゃんと最後まで聞いて。嫌いになられたら、それはそれで構わない・・」
「勇次くん、ちゃんと聞いてあげて。彼女、勇気を出して話してるんだから。女の覚悟を甘くみないで!」
僕は耳を塞(ふさ)ぎたいのを我慢して真っすぐに前を向いていた。
再び沙希ちゃんが話し始めた。
「最初は風俗だって知らなかった。お酒を飲むお客さんの相手をするだけだって思ってた。でもそのお店って下着姿でお店に出なくちゃいけなかった」
(それって・・)
僕はルームミラーでここあさんの表情を読み取ろうとしたが、暗くてどんな顔をしているのか分からなかった。
「だけど、時給は良かったし何より待ち時間の間は好きなように本が読めた。あたしは割り切ってそのお店で働いた。下着姿なだけで後は普通の飲み屋さんと変わらないと思ってたし・・」
(そのうちに・・)
「でも、そのうちにマネージャーに言われたの。もっと稼げる方法があるって。あたしは何の事か分からなかったけど、そんなの良いです、今のままで大丈夫って断った。半年位そのまま働いていたんだけど、客を取らないんなら辞めさせるって。あたしだけお客さんを取らせない訳にはいかないって言われたわ」
(果樹江悶め!)
「あたしはそれだけは絶対に嫌だったから、じゃあお店を辞めますって言った。そして次の日からお店には出なくなった。今考えると、あたしの代わりにお客さん取っている人がいたんだなって、あたしだけズルかったなって思う。でもあの時のお金のおかげで短大を卒業できたし、臨時だけど書士にもなれた。あの時に一緒にお店にいた他の女の子達のおかげだよ。あたし一人の力じゃなかったよ・」
(沙希ちゃんうっすらと涙を浮かべてた)
その時、ここあさんは少し腰を上げて後ろから助手席ごと沙希ちゃんに抱き着いた。
沙希ちゃんの頭を撫でながら「天使みたいな女の子だね」って言った。

