10号線を真っすぐ北に向かい、別大国道へと入って行く。

「今日はあなたに似合いそうな下着を持って来たわ。良かった見てみる?」

僕はここあさんに電話を掛けた時に言っていた言葉を思い出していた。

(下着の販売ねぇ。まあ良いわ、それなりにするわ。でも後できっちり請求しますからね)



「はい!見ます。最近興味あるんです、下着」

「ブラのサイズは分からなかったから今回はパンティとキャミソールだけだけど」

そう言ってさっき持ち込んだボストンバッグを沙希ちゃんに手渡した。

「見て良い?勇次くん」

「どうぞ、僕は前を向いて運転してますから」

沙希ちゃんはボストンバッグのファスナーを開け、中に入っていた下着の数々を引っ張りだしては「カワイイ」とか「これはちょっと」とか言っていた。
それを一枚一枚後部座席から解説するここあさんはやっぱり下着のプロだった。


車は更に北に向けて走って行く。



「それ、良かったら全部あなたにプレゼントするわ」

「ほんとですか?でも何か悪いなぁ」

「大丈夫よ。どうせ私のお金じゃないんだし」

(ちょー、全部僕のお金・・)

「え?」

「いえ、た、対した金額じゃないって事よ・・」


涙が出そうだった―――。


「権田先輩の事で新しい情報はありませんか?」

話題を本当の目的である先輩の話に持って行った。

「ないわね。私もお客さんを通じて那比嘉グループやあなたの会社の支社長さんについて聞いてみたけど、どれもたいした情報じゃなかったわ」

「そうですか・・」

「今のところの手掛かりは?」

「そうですね。とりあえず権田先輩の友人が酒蔵会社にいるみたいなんで、そこを訪ねてみようと思ってます。新潟からわざわざ酒を取り寄せるくらいだからまだ親交はあるだろうと願って。あとは・・」

「ももちゃんなんだけど、実家はお米を作っている農家らしいわ。だけど本名も偽名みたいでそれ以上の事は分からなかったの」

「偽名?何でまた?てか、ももちゃんはどうして大分なんかにいたんでしょう?」

「ももちゃん、お店に入ってまだ一ケ月も経ってなかったから・・」

ここで沙希ちゃんが口を開く。

「ももちゃんて、誰?」