水曜日。
今日の予定は午後1時からの『H・O・S』の面接だけだった。
僕は午前中に町造部長に電話を掛けて権田先輩の出身地を調べて欲しい旨(むね)を話した。
町造部長は調べて折り返す事を約束してくれた。
その部長から正午ちょうどに電話が掛かってきた。
「おかしいんだ。権田君に関する全ての資料が会社から消えている。ただの一つも無い。入社した形跡さえ無くなってしまっている。権田君はこの会社にはまったくの無関係になっているね」
「どうしてそんな事が・・」
「分からんね。ただ、こんな事が出来るのは相当な力が働いていると考えて間違いないな」
「相当な力?」
「そうだな、例えばうちの支社長クラスの力を持った人物。ああ見えて時期専務取締役候補だからねぇ」
「そう言えば、権田先輩、支社長の命(めい)で篠原さん達を勧奨退職に追い込んでいますよね?」
「うむ。あの時はやけに迅速だったな」
「僕はとりあえずその線を辿ってみようかと思います」
「おいおい、君はもう我社とは関係ないんだ。わざわざ首を突っ込む事はなかろうに」
「はい。でも権田先輩は今でも僕の先輩ですし、それに・・」
「なんだ?」
「それに僕の好きな人の愛する人なんです。ほっとく訳にはいきませんよ」
「そうか・・ただ無茶だけはするなよ。私も好きだった部下が不幸な目に合うのは見ていられないからねぇ」
「ありがとうございます。十分気をつけます」
これはただの失踪にしては会社の対応が大袈裟過ぎる。
絶対に何かの力が働いてるはずだ。
僕の転勤のタイミングと言い、何かがおかしかった。
(この件のキーマンは誰なんだ?)
権田先輩が一番のキーマンだとは分かっている。
だが僕にはそれだけじゃないような気がしてならなかった。
僕は午後の面接に備えて身仕度を整えていた。
その時電話が鳴った。
着信はここあさんからだった。
電話に出るとここあさんの震える声が聞こえてきた。
『ももちゃんが消えた』
昨日無断欠勤したももちゃんの形跡が跡形も無く消えたのだと言う。
(何でももちゃんが―――)
パズルのピースはばらばらだった。

