『H・O・S(Harada Office System)』

僕はミーさんに紹介状を書いて貰い、明日の午後1時に面接をしてもらう事になった。

(何かいきなりツイてるな)

ミーさんにお礼を言い、またビッグアイで会いましょうと約束をして一旦アパートへ帰る事にした。

まだ正午前。

僕はこの日の予定を早くも2件クリアした余裕で鼻歌交じりにステーションワゴンを走らせた。

昼休みに一度沙希ちゃんからメールがあり、夕飯はどうするのかと聞かれた。

僕は権田先輩の件を返信するかどうか迷ったが、いらぬ心配をかけたくは無かった為『midoriの鳥』で済ませると返信した。


三つ目の嘘―――――。


嘘は嘘を重ね、そのうち嘘に塗り固められて行く――。

僕はいつか沙希ちゃんに全てをキチンと話せる日が来ると思っていた。




夕方近くまでを家事に費やし『midoriの鳥』でオムライスとアメリカンミュージックを堪能する。

タクシーで『果樹江悶』に行き、ここあさんを指名した。

僕の下半身が少しざわついた。


「いらっしゃいませ、勇次さま。ご指名ありがとうございます」

今日の黒いシースルーの下着は、ここあさんにとっても似合っていてセクシィだ。

(いやいや、今日はそんな場合ではない)

まだ早い時間帯とあってお客は僕一人。
ボーイさんを呼び、しばらくは近づかないように頼んだ。

あまり人には聞かれたくない話しになりそうな予感はしていた。

「ここあさん、権田先輩の事何か知っているんですか?」

ここあさんは僕の腕に自分の腕を巻き付けるようにしてもたれ掛かると、声を潜めて話しを始めた。

「勇次くんに大分駅まで送って貰った日の夜の事なんだけど。権田さんから電話があったのよ。権田さんは『ヤバイ事に足を踏み入れてしまった。しばらく姿をくらます』って言ったわ。私が何を聞いても『言えない』の一点張りで『心配はしなくて良い』とも言っていた」

「ここあさん?あなたと先輩って・・」

「結婚の約束はしたわ。ただ、今の仕事が落ち着いたらって・・」

「先輩はそれなのにあの日の僕にここあさんを付けたんですか?二人ともどうかしている・・」

「そうね。ただ・・・」