【件名:ゴール裏にいます】


途中、花屋さんで注文していたシンビジュームの鉢植えを受け取りに寄った。

シンビジュームの花言葉は『誠実な愛情』だ。

鉢植え一つで僕の気持ちを伝えようなんて事は思っていない。
ただ沙希ちゃんのお母さんが花の大好きな人だと聞いていたから、ひょっとして花言葉に通じている人かな、と思っただけだ。



僕は鉢植えを抱えて沙希ちゃんの自宅玄関前に立っていた。

チャイムを鳴らすとすぐに「は〜い、ただいま」との声が返ってきた。

玄関が開けられた。
出迎えてくれたのはお母さんだった。

「こんにちは。勇次と言います。沙希さんには・・」

「もう、挨拶は良いから早くお上がりなさいな」

とても上品な顔立ちのお母さんは満面の笑顔で僕を向かえ入れてくれた。

「今日は腕に選りをかけてご馳走を作ったの。お口に合うか心配だわ」

そう言って通してくれたキッチンのテーブルの上には所狭しと並べられた料理の品々でいっぱいだった。

沙希ちゃんはキッチンで食事の準備を手伝っている様子だ。

「いらっしゃい、勇次くん。これ全部あたしが作ったのよ」

僕は「嘘でしょ?」と言う言葉を飲み込み、代わりに沙希ちゃんの瞳をじっと見た。

「やーね、冗談よ、冗談」

「そうだと思ってましたから驚きませんよ」

「この子ったらさっき起きてきたばっかりなのよ。本当にいつまでも子供で困るわ」

「そうなんですか?まったく呆れますね・・」

「な、何よ二人して。そう言う自分はどうなのよ!」

「僕ですか?僕は朝早くから起きて洗濯と部屋の掃除をして来ましたけど、何か?」

「まあまあ、それ位にして。どうぞこちらにお掛け下さい」

「あ、お母さんこれどうぞ」

僕は抱えていたシンビジュームの鉢植えをお母さんに手渡した。

「まあシンビジューム。花言葉は、誠実な愛情ね。ありがとう勇次さん、あなたの気持ち受け取りましたよ」

「へぇ〜、勇次くん花言葉なんて知ってるんだ、いが〜い・・」

「ちょ、人を何だと思ってるんですか。僕はこう見えても・・」

「はい、そこまで。早くしないとせっかくのご馳走が冷めてしまうわ。沙希、準備しなさい」

「はーい・・」

「さあ勇次さん、どうぞ」