間髪入れず熱いコールで選手達に激を飛ばすゴール裏のサポーター。
残り時間は20分と言ったところだろうか。
(頼む!逆転してくれ!)
僕もよりでかい声で熱い声援を送った。送りまくった。
その声援が届いたのか、大分の6番の選手が頭でゴールを決めた。
若松大樹選手だ。
『うおぉぉぉぉぉぉぉ!』
ゴール裏の声援が雄叫びに変わった。
僕は沙希ちゃんや、そこら辺の人とハイタッチを繰り返し、結樹さんと握手を交わした。
「よし!いける!この調子で逆転だ!」
その時、僕の脳裏にある事が浮かんで来た。
(引き分けだったらどうするんだ?)
僕は引き分けた時の事を考えてなかった。
もしこの試合がVゴールでも決着が着かなかった場合、僕の身の振り方を沙希ちゃんに委(ゆだ)ねる事は酷だろうか?
いや、そんな事よりこの試合に勝利出来るよう、精一杯の声援を送る方が今は大切だと思った。
『トリニータ!(ドドンドドンドン)トリニータ!(ドドンドドンドン)トリニータ!(ドドンドドンドン)トリニータ!!(ドドンドドンドン)』
結樹さんの叩く太鼓に合わせて、僕は精一杯のでかい声を出し続けた。
(頼むトリニータ!あと1点!あと1点で良いんだ!僕を大分から、沙希ちゃんから引き離さないでくれ!)
残り時間はあと3分。
このまま延長かと思われたその瞬間、9番の外国人選手が目の前のゴールネットを揺らした。
『ゴーーーーーール!!』
(やった!2−1だ!逆転したっ!)
ゴール裏もバックスタンドもメインの観客達でさえ一斉に立ち上がり驚喜した。
『トリニータ!(ドドンドドンドン)トリニータ!(ドドンドドンドン)トリニータ!ドドンドドンドントリニータ!!!(ドドンドドンドン)』
スタジアム中が一つになった瞬間だった。
試合はこのまま終了し、大分トリニータは川崎フロンターレを2−1で下した。
この瞬間、僕にはやらなくてはいけない事が待っていた。
「沙希ちゃん!僕、今の会社辞めるよ!」
「え?」

