(サッカーの魅力って何なんだろう?)
「もう一度聞くけどさ、あっちで一緒に応援しない?」
その言葉に僕は真剣に考えた。
彼女が面白いって言ってるんだから面白いのは疑う余地は無い。
でも今の僕にはあの集団の中に入る資格など無いだろう。
応援するのに資格等いらないと考える人もいるだろうが、その時の僕にはそう思えたんだ。
『覚悟』
応援する以上はそのチームが勝っても負けても応援する覚悟が必要だと思う。
野球でもそうだけど、チームが弱いから次のチーム。そのチームもパッとしないからまた次のチーム、って訳にはいかない。
応援する以上、この『トリニータ』って言うチームがそれだけの価値があるものなのか僕は見極めたかったのかも知れない。
「『今日は』辞めときます」
「うん、わかった。『今日は』だね」
彼女はそう言うと立ち上がってお尻に付いた芝をパンパンと手で払い、また中央へと歩き出した。
「勝つからねーっ!」
彼女は右手で握りこぶしを作って高く掲げた。
僕もそれに応えるように右手を掲げた。
この二人の様子をスタンド席からずっと見ていた那比嘉さんに、僕は気付く術を知らなかった。
(さあ、トリニータ!僕を熱くさせてみろよ!)
期待の後半戦はすぐに始まった。
僕は食い入るように戦況を見守っていた。
前半よりも入り込んで行くのが自分でも分かる。
しかしそんな僕の気持ちとは裏腹に試合は膠着していった。
両チームとも決定力を欠き、攻めては守り、攻めては守りを繰り返す。
疲れの見えてきた選手を入れ代える。両チーム一人ずつの交代。
それでも試合は動かなかった。
(引き分けだな・・)
僕が諦めてそう思った時アクシデントが起こった。
味方の選手と交錯したトリニータのゴールキーパーが腕を押さえてうずくまってしまった。
駆け寄る審判。
審判は両手で大きくバツ印を作り、ゴールキーパーの交代を促した。
(ここに来てゴールキーパーの交代か・・)
仲間に支えられてグラウンドの外に出されるゴールキーパー。
その代わりにグラウンドに入って来たゴールキーパーにゴール裏の集団はより大きな声援を送っていた。
『小山!小山!小山!小山!!』

