ゴールを決められて、より一層の声援を送る集団。
これも野球では考えられない事だった。
(でも、何か良いなこの感じ)
試合は1点負けているトリニータの攻め込む時間が長くなっている。
しかし相手ゴール前まで行くもののボールは次々と跳ね返されてゆく。
または、審判の笛でゲームは止められる。
(何かイライラする・・)
と、向こうのゴールネットが大きく揺れ、観客達が立ち上がり両手を高く挙げている。
(え?良く見えなかったけど今の入ったの?点が入った?)
芝生席中央の集団はここぞとばかりに歓声を上げ、跳びはねている。
その中に沙希ちゃんが見えた。
彼女は周りの仲間達と抱き合い、手を合わせ満面な笑みを浮かべていた。
(やった!追い付いた!)
何だか良く分からなかったが、僕も小さくガッツポーズをしてみた。
この日はもう9月半ばだと言うのに蒸し暑かった。
グラウンドの選手達も給水を捕る回数が増えている。
(喉渇いたなぁ・・しかしこの暑さの中であれ位動き回るなんてサッカー選手って凄いな・・)
実際動き回るだけじゃなく、相手の体にぶつかったり、引っ掛かってこけたりと球技と言うより格闘技に近いものを感じていた。
(これは野球と比較する方がおかしいや・・)
審判の長い笛が吹かれ選手達が引き揚げて行く。
(休憩だな・・)
僕は沙希ちゃんのいる方を見た。
案の定、彼女はこっちに向かって来る。
「ねぇねぇ!どう?面白い?」
「まあ結構。予想していたより面白いですよ。それよりどこかで飲み物買えませんか?」
「あ!いっけな〜い!」
彼女はそう言うとまた芝生席中央に駆け出した。
そしてすぐに引き返して来た。
「はい!アパートの前で待っている時に買ったんだ」
ハアハアと息を切らしながら烏龍茶のペットボトルを渡してくれた。
「ありがとう」
受け取って喉を鳴らしながら飲んだ。
彼女は既に汗をびっしょりかいていた。
「大変ですね、一緒に戦うって言うのも」
「うん。でも気持ち良いよ!大きな声を出すのも、跳びはねるのも!」
彼女はニッコリ笑ってそう言った。
今まで見た事の無い笑顔に僕は戸惑いを隠し切れなかった。

