僕らは雑用を終わらせてそれぞれのデスクでコーヒーを飲んでいると次々にスタッフらが出勤して来る。

僕にとってはいつもの見慣れた光景だが、既にデスクに着いている彼女を見つけたスタッフは口々に「雨降る?」とか「熱でも出た?」とか失礼な言葉を掛けていた。

彼女も少し位は言い返してやれば良いのにニコニコ笑っているだけだった。

と、権田さんが出勤して来た。
権田さんは僕の後ろを通って自分のデスクに座る。

「おはよう」

「おはようございます、先輩」

僕はいつもと変わらないように心掛けた。
それは支出長に対しても同じように振る舞おうと決めていた。

朝礼が始まり、一週間の予定をそれぞれ述べていく。
今週はそれ程忙しくはならないだろう。
波風立てなければ平和に一週間は過ぎて行く。

僕は心のザワ付きを抑えようと努力した。

午前中はA社に出向き三名の新人研修に付き合う。
午後はデスクワークに徹した。
それほど語る事はない一日が終わりを告げた。

アパートに戻り出来合いの惣菜をレンジに掛け夕飯を手早く済ませる。
洗濯物をベランダで干している時に携帯の鳴る音が聞こえた。


【件名:トリニータ】
もうお部屋に帰ってますか?明日はトリニータの試合です。
あのね、明日の試合の後、お泊まりしても良いですか?
お母さんには勇次君ちに泊まる事を正直に話してOK貰ったよ。
どうですか?


【件名:Reトリニータ】
良いよ。お母さんにちゃんと話したんなら。
アレ買っておいた方が良いかな?(笑)


【件名:ReReトリニータ】
バカ(笑)
買っておいて♪
(ハートがいっぱい)



この間買ったアレはもう残り一つしかなかった。一日で五つ消費した訳だ。
明日の事を考えると今夜は寝付けそうに無かった。
部屋の中をざっと片付けシャワーを浴びて早目に寝よう。
明日は体力を使いそうな一日になる。


水曜日。
いつものように出勤する。
事務所の前に那比嘉さんが待っていた。

「おはようございます」

「おはようございます」

今日も平和な一日が過ごせそうだ。