【件名:ゴール裏にいます】


リビングにはソファーの他にテレビとガラステーブル。
幸福の木の鉢植えが一本。
カウンターの向こうに冷蔵庫が置いてある。

僕は買って来たペットボトルを冷蔵庫にしまう為カウンターの中へと入って行った。

沙希ちゃんはキョロキョロしながらも無言でソファーに腰掛け、それからテレビをジッと見詰めている。

ペットボトルをしまい終え、レジ袋の底にあった『今度産む』を後ろ手に再び寝室へと移動した。

(さて、これはどこに置いておけば良いものか・・)

僕はとりあえずベッドの枕の下に隠しておいた。

リビングからはバラエティー番組の音だけが聞こえて来る。

僕はこれからどうしたら良いのか途方に暮れていた。

「喉渇いてません?何か飲みますか?」

ソファーの背後から沙希ちゃんに声を掛けてみる。

「うん。それよりシャワー使わせて貰って良いかな?」

(キタ━━━(゚∀゚)━━━ッ!!)

「し、シャワー使いますか?」

「うん、シャワー・・」

「ちちちちょっと、待って下さいね。見てきます」

何を見て来るつもりなのか、自分ながらに唐変木な答えを返したものだ。

とりあえず洗面所へ行き、変な物は置いてないか確認し、続いて浴槽を覗いて見た。

乱雑に置かれてあったシャンプーや石鹸等を見苦しくない程度に整理する。

「どどっどうぞ、ありましたシャワー。使って下さい」

シャワーがある事は分かっていたはずなのに、これまたとんちんかんな物言いをする僕・・。

「あのぅ、出来たらTシャツかなんか貸して貰える?下着の替えだけしか持ってなくて・・」

「てててTシャツかなんかですね、ちょっと待って下さい。今見てきます」

こう言う展開に馴れてないって言うか、初めての事に大きく動揺しているのが自分でもはっきり分かる。

寝室へ行き、白いスエットの上下をクローゼットから取り出す。

「こ、これで良いですか?」

「ちょっと暑そう。ほんとにTシャツで構わないから」

苦笑いをしながら沙希ちゃんが言う。

僕はタンスから『海人』の黒いTシャツを取り出し沙希ちゃんに渡した。
このTシャツは僕にさえ大きくて、まだ着た事のない沖縄土産だ。

「ありがと。じゃあシャワー借りるね」