【件名:ゴール裏にいます】


結局、僕は女性の店員さんの声を無視して男性店員に会計して貰った。

アダルトビデオもそうだけど、やっぱり性的な物を購入したり、借りたりする時は同性の方が気安い感じがする。

何はともあれ、目的の物を手にした僕らは再びアパートを目指し歩き始めた。

「勇次君のアパートってどんなとこ?」

僕の借りてる部屋はは1LDKのこじんまりしたものだ。
玄関を入ってすぐ右手にバスルームがある。
その横にトイレ。
ドアを隔て10畳程のリビングダイニング。
一番奥が6畳の寝室があった。

縦に長く造られているお気に入りの僕の城だ。

家賃は駐車場込みで月五万円。
市内中心部に程近い場所でこの金額は安い方だと思う。

僕は就職が決まると同時にここを借りた。

舞鶴橋に差し掛かり、一気に視界が開けてくる。

夜風がアルコールで火照った体に気持ち良かった。

橋を渡り、すぐに右折する。
岩田の森が目前に迫れば、僕のアパートはすぐそこだ。


『メゾン・ciel』

ここの301号が僕の部屋。
自転車を一階の駐輪場に止め、階段を二人で昇って行く。

沙希ちゃんはキョロキョロと辺りを見渡しながら着いて来ている。

301号の前に着く。

ドアキーを鍵穴に差し込み回した。

(カチャッ)

僕はドアを開け玄関の電灯を点け靴を脱いだ。

「どうぞ。散らかってますけど。」

「お邪魔しま〜す」

ちょっと間延びした声で様子を伺うように沙希ちゃんが後から入って来る。

ここに入居してから初めて僕以外の人が部屋に入って来た瞬間だった。

リビングの電灯を点け、テレビのリモコンでスイッチを入れる。

部屋の中は少し蒸し暑かった。

寝室に入り扉を開ける。

心地良い夜風が入り込んで来た。

ベランダには午前中に干した洗濯物がそのまま風に揺れている。

(朝、少しでも掃除しといて良かったな・・)

こう言う事を想定していた訳ではなかったが、片付けられた部屋を見て自分ながらに感心した。

リビングに戻ると入口に沙希ちゃんが立ったままでいるのが見えた。

「こっち来て座って下さい」

僕は初めて貰った夏のボーナスで無理をして買ったソファーを指し示し言った。