「じゃあ気をつけて。僕も後で行きますから。シャトルバスに乗る前にメールします。千尋ちゃん、沙希ちゃんの事よろしくお願いしますね」
「はやくきてね、ゆうじ」
「はい、なるべく早く行きます」
『メゾン・ciel』の駐車場で沙希ちゃんと千尋ちゃんを見送った後で、僕は街へと出掛けた。
用事を済ませてからシャトルバスに乗るつもりでレプリカユニホームを着込んで、マフラータオルを首から下げて。
路線バスをトキハ前で降りて目的のジュエリーショップへと入る。
かねてから注文していた指輪を受け取る為だ。
給料3ヶ月分とまではいかないが、自分でデザインしたサッカーボールをあしらった世界で一つだけの沙希ちゃんの指輪。
サイズは沙希ちゃんが寝ている隙に右手の薬指にリボンを巻き付けて計った。
ホーム最終戦に合わせたサプライズプレゼントだ。
「素敵な婚約指輪ですね」
ジュエリーショップの店員さんから言われた一言が嬉しかった。お世辞とは分かっていても自分のデザインした指輪を誉められるのは悪くない気分だ。
店を出てすぐに沙希ちゃんにメールをする。
【件名:用事が終わりました】
今からシャトルバスに乗って、ビッグアイに向かいます。
いつもの所で良いんですよね?
送信ボタンを押して、シャトルバス乗り場に向かった。
シャトルバス乗り場に着くなり沙希ちゃんからの返信が携帯に着信する。
僕はメールを見ようと折りたたみ式の携帯を開くのと同時に目の前をサッカーボールが転がって行った。
サッカーボールの後ろを3歳位の男の子がトコトコと追い掛けて行く。
サッカーボールはそのまま三車線の道路に転がり出た。
男の子は夢中でサッカーボールを追い掛ける。
そこにちょうど大型トラックが勢い良く走って来た。
僕は「ああ、あの男の子トラックに轢(ひ)かれるな・・」と思った。
瞬間―――。
僕の身体は道路に走りだし、男の子を抱き上げる。
『ドンッ!』
鈍い衝撃音と、タイヤの軋(きし)む音が同時にして僕は宙(そら)を舞った。
アスファルトに叩き付けられ、男の子の泣き声が聞こえた。
不思議と痛みは感じず、ただ目の前を赤い何かが流れるのを見ていた。

