一夜明けた翌日からはまたいつも通りの日常が始まった。
僕は『H・O・S』に出勤し、沙希ちゃんは図書館へと出勤する毎日。
変わった事と言えば、『H・O・S』の社長には綾蓮さんが就任し、原田社長は那比嘉グループへ出向している。そう遠くない未来、那比嘉グループの社長に原田真理の名前が連なる事となる筈だ。
『H・O・S』も那比嘉グループの傘下に入り、今までとは比べようがない位に忙しくなっていったが、『H・O・S』はプロ集団のスタンスをそのままに残し、こんな僕にでも後輩ができた。
通路に置いてある段ボールの中身を後輩に尋ねられる事もあるが、決まって言うのは「知りたかったら開けてみても良いよ」である。
しかし誰も開ける者はいなかった。
中身は『動かなくなったディスクトップパソコン一式』だった。
『H・O・S』立ち上げ時に初めて揃えたパソコン一式。姉さんの旦那さんが大切に使用していた物だ。
そんな物が何故通路にあるのか・・。
それはまだ僕の知るところでは無かった。
沙希ちゃんとの仲は相変わらずで、プロポーズはしたものの何ら生活の変化は無い。
トリニータの試合には毎試合足を運び、ゴール裏のサポーター振りも板についてきたと言うところだろうか。
明日はそんなトリニータのホーム最終戦だ。
第43節を迎えるトリニータはJ2の4位にいる。J1に昇格する為には残り2試合を90分以内の勝利が必要だった。
かなり厳しい条件だが、悲願であるJ1昇格に向けて選手もサポーターも一丸になっている。
僕らも明日は久しぶりのビッグアイ開催に胸を踊らせていた。
そんな前日の夜、僕と沙希ちゃんはアパートで過ごしていた。
「僕、明日は遅れてシャトルバスで行きます。沙希ちゃんは先に行ってて下さいね」
「何?仕事?最近忙しくなったねぇ・・」
「仕事とはちょっと違うんですが、用事があるんですよ。あ、千尋ちゃんは何て言ってました?」
「うん、千尋ちゃんも行くって。ビッグアイは初めてだから張り切ってるみたいよ」
「そうですか。僕らも負けないように張り切りましょうね」
「だねぇ・・」
こんな調子で2001年のホーム最終戦を迎えた。

