「これを思い付いたのは他でもない僕のもう一人の娘、翔子だ。翔子は僕に言った、勇次と臼村さんなら千尋の事を何とかしてくれるかも、と」
「翔子さんが・・?」
「そこで、この計画を実行した。名付けて『千尋の声を取り戻そう大作戦』だ」
「何の捻りもない名付け方ですね・・」
「ごほん!僕は娘の真理に相談した。真理もあの二人なら、とトリニータの試合を三人で観に行く事を教えてくれた。僕は大分FCと県警に協力を求め、計画を実行したんだ。騒ぎに紛れ、千尋を誘拐し、二人に千尋の居場所を教える。後は二人の行動力に期待するだけだった。二人は僕の思った通りに、いやそれ以上の事をやってのけた。まったく恐れ入ったよ」
「それじゃあ・・」
「そうだ、全てはお芝居だったんだよ。知らなかったのは勇次と臼村さんと千尋だけだ」
僕と沙希ちゃんはその時初めて後ろを振り返り、そこに集まっている人達の顔を見回した。
『H・O・S』の面々はもちろん、名山さんや、結樹さんの顔があった。那比嘉翔子も弟の旬くんもいたし、その他、市陸で見掛けた事のあるサポーターの人達も大勢いた。
200人程いる招待客を前にして那比嘉道三は話しを終えた。
僕らは那比嘉道三の計画にまんまと嵌(は)まり、真剣になって千尋ちゃんを救おうとしたのだった。
僕らをじっと見つめている大勢の瞳に晒(さら)され、僕と沙希ちゃんは声を揃えて言った。
『それって・・・・どんだけ〜え〜!!』
会場内は爆笑の渦に巻き込まれ、それを合図に宴が開始されて行った。
立食パーティー形式の会場の真ん中に奉り出された僕と沙希ちゃんは親しい人達との歓談に明け暮れていた。
(あんなに豪華な料理が並んでいるのに食べられないね・・お腹空いたよぅ・・)
(僕もですよ・・お腹空きました・・)
(ここ抜けられないかな?)
(無理でしょ?)
(だよね・・あーあ・・)
(何?あなた達ここから抜け出したいの?)
いつの間にか横にいた翔子さんが話し掛けてきた。
(できれば・・)
(分かった、私が逃がしてあげる。あなた達には似合わないもんね、こんな所)
そう言って翔子さんは檀上に上がりマイクを手にした。

