エレベーターで4Fにある鳳凰の間に『H・O・S』のみんなと向かった。
普段は結婚式の披露宴会場として使われるこのホテルで一番大きな会場だ。

もうほとんどの人達は会場内に入っているのだろう。会場前には受け付けの人数人がいるだけだった。

「ちょっとここでお待ち下さい」

野良さんはそう言ってどこかへ行ってしまった。

「じゃあ後で」

綾蓮さんや『H・O・S』の面々も、千尋ちゃんまでもが会場内に入って行ってしまう。

(ここで待っていれば沙希ちゃんが来るのかな?)

僕はどうも落ち着かなく、隅に設けられていた喫煙コーナーまで歩き、マルボロに火を点けた。

(フーッ・・一体何が始まるんだろう?)




煙草を根元まで吸い、灰皿で揉み消している時に背後から僕を呼ぶ沙希ちゃんの声がした。

「もう、何やってたんです――――」

言いながら振り向いた僕は沙希ちゃんを見て驚いた。

「あたしも何が何だか・・」

目に飛び込んで来たのは純白のドレスに身を包んだ沙希ちゃんだった。
手にこそブーケは携(たずさ)えては無かったが、まるでそれは花嫁の着るウェディングドレスその物だ。

ご丁寧に髪や化粧までスタイリングされていた。


「ど、どお?に、似合っているかな・・」

「あ、ああ・・そうですね・・とても、とても綺麗ですよ・・」

僕は呆気にとられてしまい、上手く言葉に出来なかった。

「あのね、お姉さんに裸見られちゃった・・勇次くんの付けた花びら見て、若いって良いわね、って。恥ずかしかったよぅ」

「あ、ああ・・そうですか・・」

「勇次くん・・大丈夫?」

「大丈夫・・・な訳ないですよね・・今から何が始まるんですか?」

「さ、さあ・・あたしもさっぱり・・」





「じゃあ、そろそろ中へ――」

ホテルの人と思われる紳士に促されて、僕と沙希ちゃんは会場の入口の前に立った。