「勇次、道三はお前を自分の息子として引き取りたいと言ってきた。俺には何も言う権利は無いと思っている。・・・お前が決めたら良い」
「お父さん!僕の気持ちはさっき言った通りに――」
「分かってる。お前の気持ちは嬉しい。だがな勇次、お前は那比嘉道三の息子で、道三の持つ全ての物を相続する権利を持っている。相続と言うものは那比嘉グループ全ての社員も引き受けると言う事だ。俺も麗子も途中で投げ出してしまって心残りになっている。それだけは覚えておいて欲しい・・」
「そんなの・・そんなのズルいですよ・・勝手過ぎます!」
「勝手なのも承知している。もし恨みたいんなら俺を恨め」
「くっ・・」
「言いたい事はそれだけだ。じゃあ、俺は帰るからな・・」
父親はそう言うとテーブルに手を付き立ち上がった。
僕はソファーから立ち上がれないでいた。
沙希ちゃんが慌てて玄関まで父親を見送りに出る。
「勇次、たまには海でも見に帰って来いよ。臼村さん、お邪魔したね、勇次をよろしく」
「はい!今度ひっぱってでも連れて帰ります!」
パタンとドアの閉まる音がして、潮の香もしなくなった。
沙希ちゃんはリビングの入口に立ったまま、僕に掛ける言葉を探しているようだ。
だがその言葉は見つからなかったのだろう、彼女は僕の横に座るとそっと抱きしめてくれた。
沙希ちゃんからお母さんと同じ匂いがした。

