【件名:ゴール裏にいます】


「聞きました?あの警察官の言葉。『君らはボニー&クライドか』って言ってましたよ?あはは」

僕らはやっとの思いでステーションワゴンを取り戻す事が出来、アパートに帰る途中だった。

「勇次くん浮かれすぎ。で、そのボニー&クライドって何よ」

「沙希ちゃん知らないんですか?ボニー&クライドってのは、アメリカ映画の『俺達に明日はない』の主役の名前ですよ」

「ふうん。で?」

「で?ってそれだけですけど・・映画観た方が早いですね。TSUTAYA行きます?」

「それよりシャワーして着替えなきゃ、どこにも行けないよ?」

「それもそうですね」

「あたしゆっくり眠りたいなぁー・・」

「じゃあ、二人でシャワー浴びて寝ますか!まだお昼ですけど」

「やだよ。勇次くんと一緒じゃ眠れないじゃん」

「何でですか?いつも寝てるじゃないですか」

「今のあたしの身体は勇次くんを欲しがってるの。一緒に寝たら、またしたくなっちゃうじゃん・・」

「沙希ちゃん・・発情中ですか・・」

「ばか・・変態っ!」






最後の曲がり角をアパートのある方へ曲がると『メゾン・ciel』の前に一台の黒塗りの車が停まっていた。

駐車場にステーションワゴンを停め、外に出ると黒塗りの車から野良さんが降りて来た。

「ずいぶんと遅かったですね。待ちくたびれましたよ」

「野良さん、今度は何ですか?」

「社長が今夜、お祝いの席を設(もう)けるからと、伝えに来ました」

「そんな事なら携帯に電話してくれたら良かったのに」

「携帯持ってます?一向に繋がりませんでしたが」

「持ってますよ、ほらここ――――あーっ!」

僕の携帯はズボンのポケットの中でトマトジュースにまみれていた。電源を入れようとしてもディスプレイが光る事は無かった。

「こりゃ死んだね、携帯・・」

沙希ちゃんが言った。

「嘘ぉー!」

「バチだよ、バチが当たったんだ」

「臼村さんの携帯は千尋さんがお持ちですが」

「あー!そうだ。返して貰うの忘れてた!」






『お手数かけました野良さん・・』

二人で声を合わせて野良さんに謝った。