「・・千尋ちゃん・・あなた・・」
沙希ちゃんは両手で顔を覆い、目にはいっぱいに涙を溜めている。
「うわぁーん!!ゆうじ!しんじゃやだよー!」
千尋ちゃんは僕のワイシャツを掴むと揺するように両手を動かし続けた。
それを見て耐え切れなくなった沙希ちゃんは千尋ちゃんを抱きしめ、
「ごめんね・・千尋ちゃんごめんね・・」
と言った。
「おねえちゃんのばか!なんでゆうじをころしちゃったの!ばか!ばかっ!」
沙希ちゃんは胸の中で暴れる千尋ちゃんを更に抱きしめる。
「――えっ?」
急に暴れなくなった千尋ちゃんは、
「オムライス・・」
と、言った。
そう、沙希ちゃんの首や顔に着いている赤い血のような物はトマトケチャップとトマトジュースを混ぜ合わせて作った血糊(ちのり)だったのだ。
僕は倒れた振りをしていた身体を起こすと沙希ちゃんごと千尋ちゃんを抱きしめた。
「ごめんな・・千尋。本当は死んで無いんだよ。ごめん・・」
「千尋ちゃんごめんね、ごめんね。嘘ついてごめんね」
沙希ちゃんは何度も何度も千尋ちゃんに謝っていた。
「みんな!きらいぃぃぃ!うあぁーーーん!」
「千尋ちゃん・・・・」
「誰もいません?」
「うん、大丈夫みたい」
「こんな格好で歩いていたら通報されないとも考えられますからね」
「そうだね、ヤバイね」
「よし!車まで一気に走りますよ!」
「うん。千尋ちゃん大丈夫?走れる?」
「だいじょぶ、はしれるよ」
「じゃあ行きますよ、せーの!」
僕らは一気に階段を駆け降りると路上駐車のステーションワゴンまで走った。
つもりだった。
だが、停めていた筈のステーションワゴンはそこには無かった。
「あ、あれ?」
「勇次!探し物か?」
その声に振り向くと那比嘉道三が立っていた。

