「沙希ちゃん、あなたはすぐそうやって僕のせいにしますけど、元はと言えば市陸で千尋ちゃんから目を離したのはそっちでしょ?何でもかんでも僕の責任にしないで下さいよ」
「言ったわね!あたしも責任感じているからここにこうしているんじゃない!もー!あったまきた!」
沙希ちゃんはそう言って襷(たすき)掛けしたバッグからナイフを取り出す。
(よし、予定通りだ)
薄暗い店の中にナイフの刃がキラリと光を反射させる。
「ちょっと!あなた達やめなさいよ!痴話喧嘩ならここを出てからにしてちょうだい!」
「うるさい!黙ってて!これはもう勇次くんとあたしの問題なんだから!」
「沙希ちゃん、そんな物でどうするんですか?僕を刺すつもりですか?千尋が見ている前で」
沙希ちゃんは千尋ちゃんの方をじっと見つめて、
「千尋ちゃんごめんね。お姉ちゃん、もう耐え切れないの・・こうするしか・・」
「本気なの?あなた・・狂ってるわ・・」
沙希ちゃんは那比嘉翔子の言葉にニヤリと笑って僕に飛び掛かって来た。
「うっ!・・嘘だろ・・?」
彼女の持っているナイフは僕の腹部に深々と刺さり、それを中心にして白いワイシャツに赤い模様が広がっていく。
彼女がゆっくりとナイフを抜くと、ワイシャツの下から赤い血が噴き出し、彼女の白いワンピースに降りかかった。
「キャーー!!・・なんて事――――」
那比嘉翔子は千尋ちゃんから離れると、後ずさりをしながら出口に向かって行く。
「わ、私は知らないわよ・・私のせいじゃないわ・・く、狂ってるわ、あなた・・」
そう言って『SHOT BAR 薫(くん)』を出て行ってしまった。
僕は床に倒れたまま、次の作戦が成功するのを祈っていた。
沙希ちゃんは手からナイフを落とすと僕の死体に縋(すが)り付いて茫然としている。
小さな影が少しずつ僕に近寄って来るのを感じた。
その影が僕を見下ろしている。
「―――ぬな・・・」
「!」「!!」
「ゆうじ・・ばか・・しぬな・・」
か細い声。だけどハッキリと聞こえた。

