「何かありましたらいつでも構いませんので連絡して下さい」
刑事にそう言って僕はアパートへと引き返した。
『メゾン・ciel』の301号室ではキッチンに立った沙希ちゃんがある物を作っている最中だった。
「違ったんでしょ?」
僕が部屋に入ると真っ先にそれを聞いてくる。
「はい。違いました。千尋ちゃんの靴ではありませんでしたよ」
「ねえ?これ位の量でいい?」
「それじゃあ多過ぎません?」
「そっかなぁ?こう派手にドバッとって思ったんだけどなぁ」
「それにそんなに大きくちゃ着けられませんよ?」
「じ、じゃあさ、これの半分位?もっと?」
「じゃあこれをガムテープで貼付けてっと・・うわぁ・・剥(は)がす時痛そ〜」
沙希ちゃんは一通りの作業を終えると今度は自分の身支度を始めた。
「勇次くん、何着るの?やっぱ白いワイシャツ?」
「そうですね。白い服の方が目立って良いですからね」
「じゃあ、あたしもこの白いワンピースにしようっと」
「ちょ、コーディネートしてる場合じゃ。それに汚れたら落ちないかもですよ?」
「そしたら新しい洋服買ってねっ。未来の旦那さん」
「ちょ、何で僕が・・」
「あら?それくらい演技料払ってよね」
「演技料って・・女優気取りですか・・」
「ちょっとリハーサルやろうよ。ぶっつけ本番じゃ無理よ」
こうして僕らの作戦は始まっていった。
主演・監督・脚本『勇次』
助演・脚色『臼村沙希』

