【件名:ゴール裏にいます】


「さて、それではみなさんも落ち着いたようですね。では話しを始めましょう」

野良さんはぐるっとみんなを見回してから静かに話しを始めた。





「私が沖縄に行ったのはここにいる那比嘉道三の尻尾を掴(つか)む為でした。どんな些細(ささい)な事でも良いからとの社長の命の元に――」





野良さんは沖縄に行き、那比嘉道三の事を徹底的に調べ上げた。生まれた家から小学校時代の友達、親戚縁者、ヤクザ者に至るまで徹底的に。
時には琉球空手の師範代の力まで利用して。

だが、那比嘉道三の悪事は愚か、悪い噂さえ聞く事は出来なかった。
那比嘉道三の地元では道三は英雄であり、太陽だ、と言う者もいたくらいだ。

那比嘉道三は一代で財を成した実業家以外の何者でも無かった。



社長の旦那さん殺しを疑う野良さんも次第にその考えを和らげていったのだと言う。

そこにきて話しが出て来たのが、僕の母親だった。

道三と離婚後に道三の地元に訪れた母親の話しが聞けたのだと言った。