結局夜半まで続いた捜索では何の手掛かりもなく打ち切られた。
明日は朝から自衛隊の手を借りて大分川の底をさらうらしい。
でも僕には分かっていた。千尋ちゃんはそんな所にはいない。
千尋ちゃんを誘拐したのは那比嘉翔子だろう。
あの赤いドレスの女は確かに那比嘉翔子だった。
「一旦私のマンションに戻りましょう。ここでこうやってても何にもならないわ。それにあの子はここにはいない」
原田社長と田中さんは樫本さんの運転する車で、僕と沙希ちゃんは綾蓮さんの運転する車にそれぞれ分乗し、『H・O・S』の上階にある原田社長のマンションへと向かった。
マンションでは沖縄出張から戻って来た野良(やら)さんが温かい飲み物を用意して待っているらしい。
「みなさん、お疲れでしたね。さ、温かい飲み物と軽い食事を用意してますので」
野良さんに通されたリビングは『メゾン・ciel』二部屋分の広さがあった。そしてそのリビングに置かれたソファーセットに見知らぬ男性が腰を掛けていた。
「君が勇次か?」
その男性が僕の名前を呼んだ。
「僕は那比嘉。那比嘉道三だ」

