【件名:ゴール裏にいます】

「何だ?!」

帰り掛けたサポーター達もその男の行動に信じられないと言った様子で立ち止まる。

その男は叫び声を浴びせながら選手達を追い掛けた。

「ちょ!何やってんだ!」

その男を止める為に複数の警備員が走る。
結樹さんも男を止める為にグラウンドに飛び降りた。それに続くゴール裏のサポーター達。

「僕も―――」

と、フェンスに掛けた手を沙希ちゃんが止める。

「勇次くんは行っちゃダメ!」

「何で!あの男を止めないと!」

「ダメっ!絶対に行かせない!」

「沙希ちゃん!」



ゴール裏は混乱に混乱を極め、怒号と叫び声が入り混じった。

しかしその男は突然に選手達を追うのを止め、あっけなく警備員に確保された。



そしてニヤニヤ笑う顔で僕を見た――。



「えっ!?」

「何?どうしたの?」

思わず叫んだ声に沙希ちゃんが驚いたように僕を見た。

「あの男、僕を見て笑いました・・」

「まさか、何かの勘違―――!!」

「え?」

「勇次くん!千尋ちゃんがいない!千尋ちゃん!」

沙希ちゃんの声に振り向くと、そこに座っているはずの千尋ちゃんの姿が消えていた。

「何で!まさか!!千尋っ!千尋っ!すいません!どなたかここに座っていた女の子を知りませんか?!4歳位で瞳の大きな女の子です!知りませんか!」

(何で!何が起きた!)

「勇次くん!何?どうなってるの?」

「分からない・・どうしてこんな事がっ!」


「どうしたの?大丈夫?」

「あっ!名山さん!千尋ちゃんが!千尋ちゃんが!」

「何よ!どうしたの!落ち着きなさい!」

「名山さん・・千尋が・・千尋がさらわれた・・」

「えっ?」







「とにかく、手分けしてこの辺を良く探してみよう。みんなよろしく頼む!」

結樹さんらサポーター仲間が集まり千尋ちゃんの捜索が始まった。

原田社長にも連絡し、警察にも競技場の運営者にも連絡した。

綾蓮さんにも携帯で連絡を取り来て貰った。樫本さんと田中さんもこちらに向かって来ていると言う。

僕は―――





僕はとんでもない過ちを犯してしまった―――。