「千尋ちゃんか、こんにちはよろしくね」
身をかがめて挨拶する名山さんに千尋ちゃんは携帯のディスプレイを恥ずかしそうにそっと見せた。
『ちひろです よんさいです』
「名山さん、この子――」
言いかけた僕を右手で制し、名山さんは続けた。
「4歳かぁ、もう携帯使えるなんて凄いわね。お姉さんともメールしてくれる?」
俯(うつむ)き加減だった千尋ちゃんは顔を上げ、その表情に笑顔を走らせると再び携帯のディスプレイに文字を打ち込んでいった。
『うん します』
「ちょっと携帯貸してね・・お姉さんはねぇ・・ほら、ここにあった、なやまって言うの、よろしくね千尋ちゃん」
千尋ちゃんは大きくウンと頷き、照れたように僕を見た。
「良かったですね、またメル友が増えましたよ?」
『うれしい』
「――大まかに話すと、こんな感じです」
「ふうん、お父さんが亡くなるところを目の前で見たんだあの子・・」
僕は名山さんに二人から少し離れた所で話しをしていた。
「勇次くん・・私、決めたわ。もう一度看護の道を目指そうと思ってたの。うん、決めた」
「名山さん、看護師さんだったんですか」
「そうよ。辛くて投げ出しちゃったけど、もう一度がんばってみるわ」
「セクシィな看護師さんですね」
「勇次くんが入院する事があったら手厚い看護を約束するわよ」
「ちょ、それ、冗談に聞こえませんよ?」
二人であははと笑った時にあの人が近付いて来た。
「よう勇次!今日は真裏に来ないのな!」
「結樹さん!こんばんは。相変わらず元気ですね」
結樹さんはがははと笑って僕に耳打ちをする。
(紹介しろって・・)
(ああ・・はい・・)
「名山さん、こちらサポーターズクラブ『ニータ21』の会長さんで結樹さんです」
「どうも、結樹っす。新潟でお会いしましたよね?覚えてますか?」
「太鼓の人でしょ?覚えているわ。よろしく。名山です」
「あの、良かったらあっちで一緒に応援しません?新潟での名山さんの一喝に惚れちゃって・・良かったら、ですけど」
「勇次くん、私、行っちゃっていい?」
「僕の分までよろしくお願いしますよ、名山さん!」

