「こんにちは!千尋ちゃんお待たせぇ〜」
「勇次くん、臼村さん、よろしくお願いね」
「はい。9時までには帰って来ますから」
それまで助手席に乗っていた沙希ちゃんは千尋ちゃんと後部座席に移り、原田社長に手を振っていた。
「一度アパートに戻りますよ?」
「うん、そうして。試したい事もあるし」
「何ですか?試したい事って」
「えへへ、内緒っ。ねー、千尋ちゃん」
ルームミラーを少し動かすと後部座席の二人の笑顔が見えた。
「僕、ちょっとベットで横になってますから」
「オッケー、寝ちゃっても良いよ。時間が来たら起こしてあげる」
「お願いします」
僕は寝室のドアを閉めてからCDステレオの電源を入れた。お気に入りのCDをコンポに滑り込ませると軽快な音楽が寝室を満たしていく。
ベットに仰向けになり、身体をこれ以上伸びないだろうと思うまで伸ばした。
疲れた身体の節々が悲鳴をあげる。
「んっ・・・・・・・・・・・ふぅ〜」
目を閉じてしばらくするとズボンのポケットに押し込んだままの携帯が細かく振動を繰り返した。
(メールか?)
折りたたみ式の携帯のディスプレイに浮かび上がっているのは沙希ちゃんからのメールが届いた知らせだ。
【件名:なし】
ゆうじ ねるな
(ん?何だこれ――)
そう思うと同時に寝室のドアが開かれ、沙希ちゃんと千尋ちゃんがクスクスと笑いながら僕を見ていた。
「メール届いた?千尋ちゃん凄いよ!ちょっと教えただけで、もうメール使えるようになったよ!」
「本当ですか?」
「あー!千尋ちゃん。あの人疑ってるよ。もう一回送ってやって。今度はあたしも何も言わないからね」
沙希ちゃんはそう言うと、僕の寝ているベットの縁に腰掛けた。
千尋ちゃんは寝室の入口に立ったまま、小さな両手で僕と同じ機種の携帯を一生懸命に操っている。
そして、送ったと言う合図をした――。
『ブーン、ブーン、ブーン』
僕の手の中の携帯が震える。
【件名:なし】
ゆうじ だいすき さきおねえちゃんもすき
「凄いよ・・」
「あー、あたしはただの好きか・・」
(え〜?そこぉ〜?)

