「キャーッ!!」
「いやぁあああ!!」
「沙希っ!何で!」
権田先輩と沙希ちゃんはもつれるようにして倒れ、その弾みで沙希ちゃんは危うく海に落ちそうになった。
先輩の顔は真っ青でジーンズの股間はビッショリと濡れていた。
(血だ・・)
尚も先輩のジーンズの染みは広がっていく。
「何てことだ・・」
僕は倒れた沙希ちゃんに駆け寄り、抱き起こした。
「どうして・・」
そう言う僕の顔を見て、沙希ちゃんは笑っていた。
「??」
沙希ちゃんは自分の手に持っていたままのナイフを僕に手渡す。
「おもちゃじゃん!」
ナイフは先端を指で押すと柄の中に引っ込むタイプのおもちゃだった。
「こんな事もあろうかとS.A.の売店で買ってたの。どう?びっくりした?」
そう言って笑う沙希ちゃんを見て、僕も思わずおかしくなってしまった。
「し、死んだと思った・・何なのこの娘は・・」
ここあさんが言った。
「し、ションベン漏らしちまった・・・」
先輩が呟く。
沙希ちゃんは抱き抱えていた僕の手を解き、立ち上がるとこう言い放った。
「名山さん、こんなションベン垂れなんかほっときましょ。名山さんにはもっとお似合いの人がきっと見つかる。こんなのはそこの乳牛とたんぼでも耕していると良いんだわ!急がないと試合が始まっちゃうよ。勇次くん行こ!」
沙希ちゃんはそれだけ言うと、ホテルの方に歩いて行った。
「ここあさん・・」
「ももちゃん、こんなションベン垂れで良かったらあげるわ。その代わりに幸せにしてもらいなさいよ・・。じゃあね、このションベン垂れ!」
ここあさんも沙希ちゃんの後に続く。
「先輩、今日の勝ち点は僕らのものですね。早く着替えて。スタジアムで待ってますからね」
「ここあ・・勇次・・」
「ここあ姉さん!ごめんなさいっ!わたし、幸せになります!」
出遅れた僕は先に行く二人を追い掛けた。
日本海に沈んでいく夕日がちょうど真正面に見えている。
試合開始まで1時間を切っていた。
「ここあさん!パンツ履いてます?」
「ええ、ブルーのパンツを履いて来たわ。あの娘に言われて」

