「きゃっ!」
声を上げたのは沙希ちゃんだった。
「こら!名山椎!起きろ!」
大きな声を出し、今度は乱暴に揺する。
「ちょっと!何よこれは・・」
「ここあさん、やっと起きましたね。さあスタジアムへ行きますよ。僕はロビーで待ってますから早く仕度して降りて来て下さいね。それから沙希ちゃん、フロントに電話してベットのシーツ取り替えるように言って下さい。じゃあ僕は先に降りてますから」
「う、うん。分かった・・」
僕はここあさんが何か言ってるのを無視して彼女らの部屋を出て行った。
エレベーターでロビーまで降り、煙草の吸えるスペースを見つけ、そこのソファに腰を落ち着けた。
秋の行楽シーズンとあってホテルのロビーは大勢の家族連れで賑わっている。
それぞれの顔はみんな笑顔で溢れている。
(そうだよ、せっかくの新潟なんだから楽しまないと。僕らもここあさんも)
煙草を一本吸い、二人が降りて来るまで時間が掛かりそうな気がして喫茶コーナーへと場所を移した。
コーヒーを注文して一息入れ辺りを見渡す。
ここでもオレンジ色のアルビレックスサポーターが数名いた。
新潟は土地も広いし、県外のサポーターもいるだろうし、泊まりがけでサッカー観戦に来ていても不思議はない。
ただその中に見知った顔を見つけるまでは僕はコーヒーを楽しんでいた。
いた・・。
このホテルのロビーの喫茶コーナーに僕らが探し求めていたあの二人がいた。
僕は最初、幻でも見ているんじゃないかと何度も何度も二人を見直した。
間違いない。
権田先輩はこちら側に背中を向けていたが、ももちゃんの巨乳は確かに間違いなくももちゃんのものだった。
僕は立ち上がりゆっくりと二人の座っているテーブルに近づいて行った。
最初に気がついたのはやはりももちゃんだった。
ももちゃんはお化けでも見るような目で僕を認めると、対面に座っている権田先輩に合図を送る。
やはりゆっくりと権田先輩が僕の方を振り向いてくる。
「な、何で?」
権田先輩が驚きの声を上げた。
「何でじゃないですよ!こんな所で何やってんですか!」
思わずでかい声を張り上げる。
周りの人達が静かになった。

