『向井のアド教えてよ』


『えっ!?』


向井ゆんは頬を赤く染めた。初なのか。


『悪い?』


『いや…。』


『じゃケータイ出して』


『…ごめん持ってない』


『は?』


『家の番号ならいい。
ケータイは持ってない』


『そっか。』


なんだかショック。


『じゃ番号教えて』

そう言うと向井ゆんは電話番号をメモ帳に書いてくれた。こんな暑い教室の中、オレは向井ゆんに夢中になっていた。

『ありがと。
暇あったら電話するし』


『…うん。
何のために?』


『あ?』


『いや…』


向井ゆんはそう言うと下を向いた。さらさらな髪の毛が夏の暑い風とともに吹き上げる。

その瞬間、向井ゆんの左耳にピアスが沢山開けられているのが目に入った。
オレはギャップを感じた。