『ごめんね、……そうだ、携帯番号』

思い出したようにそう言う高遠先輩に、これ以上渋るのも悪いかなと思い、あたしはスカートのポケットから携帯を取り出した。

「……赤外線でいいですか?」

問いかけると、高遠先輩は優しく笑って頷いた。

『ありがとう、じゃあ連絡するから、……またね』

あたしが自局番号を送ると、高遠先輩はそう言ってあたしの元から離れていった。

……高遠先輩は、あたしに教えてくれなかった。

やっぱりあたしは、高遠先輩にとってそれくらいの存在なのかな……。

自分の番号を教えるまでにも値しない、やっぱりあたしはただの“もの”だからなの……?

あたしは高遠先輩に、どう見られているのかな……。

いつもそればかりが気になって、それでも高遠先輩からは何も言ってくれないから、結局未解決で。

気にすれば気にする程、自分はもの扱いしかされていないんじゃないかと、落ち込んで……。

どうしたら高遠先輩は、あたしに教えてくれるの?

別に全て教えてくれなくてもいいから、せめてあたしの存在を教えて欲しい。

好きになってとは言わないから、せめてあたしを心から必要として欲しい。

理由も言わずに、ただあたしがいいと言うだけじゃ何もわからないから、ちゃんと伝えて欲しいのに……。

高遠先輩は、いつもそれをごまかして……何だかあたしの存在を軽視している気がして、あたしはいたたまれないよ……。

あたしは少し落ち込んで俯いて、哀しい気分のまま校舎へと入っていった。