純情恋心


『じゃあね那智っ、また明日!』

元気よくそう言った千歳はあたしに大きく手を振り、上履きを履き替えて昇降口を出ていった。

だけどあたしは、目の前の光景のあまりの衝撃にまだ動けずにいた。

どうして、だってそんなはず……メールは?

どうして貴方はそこにいて、あたしを真っ直ぐに見ているの……!?

動けずにいるあたしを見つめるその人が、ゆっくりと近付いてくる。

そして目の前に来ると口を開き、ずっと聞きたかった声を聞かせてくれた。

『久しぶりだね、那智』

久しぶりに呼んでくれたあたしの名前、……それだけであたしは、涙が出た。

「っ、高と……先ぱっ……!!」

同じクラスの人、違うクラスの人、たくさんの生徒が階段を降りてくるのに、あたしはどうしても抑える事が出来なくて……。

でも溢れては次々と零れ落ちる涙を、高遠先輩がセーターの袖で拭ってくれた。

『あのさ、ここでそんなに泣かれるとちょっと……。学校を出よう、歩ける?』

困らせてしまった事が余計に涙を誘い、それでも頷いて下駄箱に向かう。

上履きを履き替えて昇降口を出ると、高遠先輩はあたしの肩を抱いて支えながら歩いてくれた。

しばらくそうして歩き、学校の近くにある小さな公園に入ると、高遠先輩はあたしをベンチに座らせた。

『……ごめんね、また泣かせちゃった……』

「っ、違……嬉しくてっ……!」

自分に非があるというように謝る高遠先輩を、あたしは否定する。

それでもどうしても涙声になってしまうから、首を何度も横に振る事でしか伝えられない。

高遠先輩に非がある訳じゃないのに、ただあたしが嬉しくて泣いただけなのに……。