純情恋心


『那智帰ろうっ』

挨拶を終えて千歳と教室を出て、チョコチップメロンパンについて話しながら並んで廊下を歩く。

教室のある3階から階段を降りていく途中で、3年生の教室のある階をちらりと見ると……誰もいない。

……そうだ、今日3年生は5時間授業だったんだ……。

だったら尚更もう会う事は期待できないと、また気持ちが沈んでしまったあたしに、千歳は明らかに困ったような表情を向けた。

『……那智、やっぱり何かあったんだね?』

階段を降りるスピードが少し遅くなり、千歳があたしに視線を向けながらも注意して階段を降りる。

「……メールがこないだけだよ」

別に隠す必要もないと判断してそう言うと、千歳はあたしの前に立ち塞がって足を止めた。

『……高遠先輩から?』

「うん、……ていうかなんで目の前で止まるの」

階段が降りられない、と続けようとしたあたしに、千歳はなぜかにっこりと笑った。

『チョコチップメロンパンは明日にしよう!』

「え? なん……ちょっ、千歳!?」

いきなり一気に階段を駆け降りていった千歳を追って、あたしも急いで階段を降りる。

そして下駄箱が見えるところまで降りた時――目に飛び込んできた姿に驚いて、危うく階段を踏み外しそうになった。

「っ、どう、して……!?」

そのまま動けなくなってしまったあたしに、階段を降りきっていた千歳はもう一度笑って口を開く。

『メールじゃなくて本人が来たねっ!』

そう言った千歳の後ろの方、あたしの下駄箱の前に、待っていたあの人の姿……。

でも、どうして……?