純情恋心


『――那智ったら、何寝ぼけてんのよー』

授業が終わり、帰りのホームルームが始まるまでの少しの時間に、千歳があたしの席の方にやってきた。

「別に、寝ぼけてた訳じゃなくてっ……まぁもう気にしないで」

結局、今の時間になっても高遠先輩からの返信はなくて。

あたしは沈んでしまった気持ちを少しでもごまかそうと、笑ってみせる。

でもやっぱり、千歳には勘付かれてしまう。

『……何かあったの?』

メールを送った事は話していないから、多分本当に勘だったんだろう。

それでもきっと千歳の事だから、なんとなくはわかっていると思って、あたしは笑うのをやめた。

「ちょっと、ね……」

『えっと……あんまり落ち込むな、またチャンスはあるんだから』

「……うん」

頷きながらも、チャンスなんてきっとないと思った。

一度会えないとわかれば、またメールをしても答えは変わらない……、やっぱりもうだめなのかも……。

『だから落ち込むなって! ……ほら、じゃあ今日チョコチップメロンパン買ってあげるからっ』

あたしを好きな食べ物で釣ろうなんて、……千歳はやっぱりあたしの事をよく知ってる。

「じゃあ駅の近くのパン屋さんのがいいな、あそこのが一番美味しいから!」

『お、元気になった。しょうがないから買ってあげるわよ、だからもう落ち込んじゃだめよ?』

千歳のその言葉に頷くと、ちょうど担任の先生が教室に入ってきたので千歳は自分の席に戻った。

今話している間も携帯を握り締めていたけど、結局返信はなくて……、あたしは千歳に見られないようにひとつため息をついた。