少し雰囲気が変わった気がして、あたしは思わず高遠先輩から視線を逸らした。
逃げようとも思ったけど、腰に回された手が、それをさせてくれない……。
『どうしたの、那智?』
その言葉と同時に、もう片方の手があたしの頬に触れて、高遠先輩の方へと顔を向けさせられる。
『……だめじゃないんだよね?』
そう言った高遠先輩は、見た事もない表情で……あたしを悪戯な微笑みで見つめていた。
何が起きたのかはわからないけど、多分、逃げなきゃいけないんだと本能的に思った。
だけどもう、逃げられない……。
『約束だよ? 君は、俺のもの……』
グイッと腰を引き寄せられたと思ったら、次の瞬間には――……
「……っ……!?」
目の前に高遠先輩の顔があって、唇に唇が、あたっていて……。
「んっ……、っ……」
抵抗出来なくて、息も出来なくて……、あたしはただ高遠先輩の腕を強く握り締めた。
「んー……っ、……はぁ……」
唇が離れてやっと息が出来たと思ったら、あたしは全身の力が抜けてしまって、高遠先輩の腕にすがり付いていた。
――……何が、起きたの……?
今、何が起きたのか訳がわからなくて、少し乱れた息を整えながら頭を整理させた。
えっと……引き寄せられて、見上げたら、高遠先輩の顔が、……あれ……?
それで、気付いたら唇……唇……!?
事を理解した瞬間に、あたしは顔から火が出そうになった。
何で、なんで唇……っ、えぇっ……!?
混乱したあたしは、すがり付いていた高遠先輩を熱い顔のまま見上げた。
すると高遠先輩は優しく微笑んで、あたしの頭をそっと撫でる。
『だめじゃなかったんでしょ?』
小首を傾げてそう言うと、高遠先輩はあたしを見つめ返した。
だめじゃなかった、って……こんなの、こんなのだめに決まってたのに……!
