純情恋心


どうしよう……、どうしたら……

『……那智?』

俯いたまま上げられなかったあたしの顔を、高遠先輩が身を乗り出して覗き込んできた。

「っ、ひゃあ……っ!!」

だからあたしはあまりにもびっくりして、思わず変な声を出して飛び上がってしまった。

『ごめん、大丈夫?』

「えっ、あ、っあ……す、みません……っ」

あたしが出した声に、高遠先輩だけでなく周りの人も驚いたようで、揃ってあたしを見ている。

だからあたしはまた恥ずかしくなって、再び椅子に座ると熱い顔を俯かせて、手でスカートの裾をギュッと握り締めた。

『那智って、本当に面白いね』

あたしの様子を見てクスクスと笑う高遠先輩が、そう言いながらまたあたしの顔を覗き込んでくる。

そんな高遠先輩にまたドキドキさせられて……あたし、どうしたらいいんだろう……。

ふと気が付くと、相変わらず黙って俯いているあたしに構わず、高遠先輩はいつの間にか隣の椅子に座っていた。

そんな些細な事にさえ、あたしはドキドキしてしまうのに……

『那智はさ、いつもこんな感じなの?』

高遠先輩は、絶えずあたしに言葉をかけ続ける。

「っ、……」

だけどあたしはなかなか声を出せなくて、言葉がつまってしまう。

『……緊張してるの?』

ずっとしゃべれないでいたあたしに、高遠先輩はついに呆れたようにそう問いかけてきた。

それには答えなきゃと声を出そうとしたけど……やっぱり出なくて。

「っ……う……」

あたしは首を幾度も縦に振って、自分の状況を暗示させた。

『ははっ、そうか、緊張してるんだ……』

そう言うと、ホームへ入ってきた電車へと視線を移した高遠先輩に、あたしはあたしの状況を知ってもらえたと安堵した。

――だけど、そんなんじゃなかった。